かつて適応障害で休職していた頃のぼくは、慢性的な抑うつ状態に苦しんでいました。
一番つらかったのは休職から2か月目くらいだったでしょうか。
その頃にインターネット上で目にした言葉で、今でもひときわ心に残っているものがあります。
それがこちらです。
僕は「うつ」という暗くて長いトンネルにさしかかった時、とにかく不安で、初めはなんとか元の状態に戻ろうとしていた。
でも次第に、僕に必要なのは入口へ引き返すことではなく、ただトンネルを向こう側まで掘り進めていくことなんだと気がついたんだ。
これには確かな出典があるわけではなく、確かどこかの掲示板かYouTubeに書き込まれていた、海外の名も知れぬ一般人のコメントをたまたま読んだものです。
(原文は英語だったので、上記の内容はあくまでぼくのざっくりとした意訳となっています。)
今回は、ぼくがとても気に入っているこの言葉にもとづいた考え方について書いていきます。
抑うつ状態はトンネルに似ている
うつの状態は、よくトンネルに例えられることがあります。
光の届かない、暗くてジメジメした世界に入り込んでしまった感覚。
視野も狭くなり、どこにも逃げ場がないかのような閉塞感、絶望感。
そのトンネルに入ってしまった人は、そこからすぐにでも脱出したいと望みます。
しかし周りは壁に囲まれていて、なかなか抜け出すことはできません。
またトンネルがこの先どれくらい続いていくものなのか、いつゴールにたどり着けるのか、見当もつきません。
その先行きの見えない不安が、日々をいっそう苦しいものにします。
とりわけ近年右肩上がりで増加している「うつ病」を抱える人は、何か月・何年という長期スパンでそうした苦しみの中に身を置いているわけですね。
長い長い、真っ暗なトンネルです。
入り口には引き返さない
うつ状態というトンネルにさしかかると、
「元気だったあの頃に戻りたい!」
という願望に駆られるのは自然なことかと思います。
トンネルの奥はどこまでも真っ暗で、行く先は何も見えない。
一方で後ろを振り返ってみると、元いた外の世界の明るい光が入り口からほのかに漏れているのです。
そりゃあ、引き返したくもなりますよね。
戻りたくても戻れない
しかし、元も子もない話ですが、いくら「元通り」を望んだところで、実際に元に戻ることはできません。
時間は一方向にしか進まないですからね。
もしメンタル不調に伴って環境の変化(学校なら転学とか、仕事なら休職・退職とか)があった場合は、その事実は今後の体調がどうなろうと決してなくなることはなく、人生において何らかの影響を及ぼし続けます。
環境の変化がない場合でも、うつ状態に陥ったことによる自分自身の変化は残ります。
たとえば人間関係への苦手意識が強くなって、人と関わる際の緊張感がより高まるようになったとか、同時に疲れやすくなり体力がもちにくくなったとか、そういう変化があるかもしれません。
人は過去には遡れないので、完全に元いた場所に戻ることはできない。
どれほど後ろ髪を引かれる思いがしても、トンネルに入った時点であとはもう奥に向かって進んでいくほかないのです。
なんだかこう聞くと、わずかに見える光すら捨ててしまった悲観主義のようにも思えます。
戻る必要もない
ところが同時に、
「元いた場所って果たして本当にベストな環境だったのか?」
と根本的に考えてみると、いやいや、実はそんなこともなかったと気づいたりします。
だって元々の場所には、そのままでは抑うつ状態に突入してしまうような悪条件のそろった世界があるのです。
またそうなることも知らずにメンタルを日々すり減らす、未熟な自分がいます。
そこは、どのみち今いるトンネルへと続くはずの道でしかありません。
となれば、そもそも「元の状態」を目指す必要なんてないんじゃないか、ということになってきます。
トンネルの中を行く道程は、目標を過去に据えている限りは後退もしくは停滞でしかありませんが、一転して未来に目を向ければ、たちまち前進となります。
せめて時間の流れと進む方向が一致していれば、暗いトンネルの旅もいくらかましに思えてくるかもしれません。
結論:ゆっくりでも前に進む
かつての元気だった頃の自分には、目指したところで戻れないし、よく考えたらそもそも目指す必要もない。
ということで、うつ状態というトンネルの中を進む態度としては、
「今はとにかく奥を目指して気長にぶらぶら歩くか~」
くらいの心持ちでいるのが良さそうです。
トンネルをひたすらまっすぐ掘り進めていけば、いつかはどこか、山の向こう側でまた外界へと通じますもんね。
つらい抑うつ状態を抜けた自分には、入り口にいた頃の自分が持ち合わせていなかったような知識や経験、新しい考え方が確かに備わっているはずです。
本当に目指すべきは、「変わってしまう前の過去の自分」ではなく、「新しく変わりきったこれからの自分」だということです。
ぼくはこうした開き直った考え方を、いつか目にした言葉とともにふとしたタイミングで思い返しては、そのたび自分によく言い聞かせています。
僕は鬱(うつ)という暗くて長いトンネルにさしかかった時、とにかく不安で、初めはなんとか元の状態に戻ろうとしていた。
by 海外の名も知れぬ一般人
でも次第に、僕に必要なのは入口へ引き返すことではなく、ただトンネルを向こう側まで掘り進めていくことなんだと気がついたんだ。