【公務員】県庁職員1年目に働き始めて驚いたこと ~業務の分担が予想以上に徹底されてること~

今回は、ぼくが新採公務員として県庁の仕事を始めたばかりの頃に感じたことを思い返してみようと思います。

特に大学などを卒業してそのまま公務員になる人は、公務員の仕事を知らないのはもちろんのこと、組織に属する社会人として働くのも初めてでしょうから、とにかく右も左も何もわからない状態ですよね。

ぼくも何もわからないまま入庁が決まり、わからないなりに「こんな感じかな~」となんとなくのイメージをしていたのですが、やっぱり実際に職場に入ってみると、自分の想像とリアルとの間には結構ギャップがありました。

個人的に一番ギャップが大きかったのが業務分担・担当者の責務に関する考え方の部分だったので、今日はそのあたりについて書いてみます。

ちなみにぼくが1年目で務めていたのは、地方の県庁行政職の福祉系の部署です。
もちろん公務員すべてに共通する話とは限りませんので、あくまで参考程度にしていただけると幸いです。

入庁してみて個人的に驚いたこと

ぼくが新採で職場に入ってみて印象的だったのは、業務がとにかく細分化されて各担当者に委ねられている、ということでした。

言い換えれば、

  • 縦割り行政が究極まで進んで、個人レベルにまで縦割りされている
  • ある業務について詳しく知っているのは、その業務の担当者一人だけ
  • もし担当者の仕事が不十分だと、問題が起きるまで誰も気づかない

といった状況です。

入庁前にぼくがぼんやりと抱いていたイメージでは、オフィス仕事というのはもう少しなんというか、リーダー率いる何人かのチームで手分けして共通のタスクをこなす姿を想像してたんですね。

おおげさにいえば、よくドラマとか漫画であるような、

上司「〇〇、来週までにコレ頼めるか?(資料ドサッ)」
後輩「先輩今週大変そうですね。今日は僕も一緒に残業しますよ!」

みたいな世界観をイメージしていました。

しかし、実際にはもっと各職員個人が自分の領域の業務にのみ責任をもつような共通認識があったんです。

自分の仕事は自分で管理する。
忙しい人は残業するし、そうでもない人は早く帰る。

そういった個人主義的なムードが少し意外だったというお話です。

担当者ごとの業務が徹底的に分かれている

まず前提ですが、自治体が行うべき行政サービスというのは、組織の中で「部」とか「課」とかに振り分けられて、基本的には扱う業務の範囲が被らないようになっています。

結果的に似たことをやっていても、違う課が担当している事業や業務の内容はお互いに知らない。
いわゆる縦割り行政というやつです。

ぼくが意外だったのは、この縦割りの仕組みが課の中の「係」とか「担当者」のレベルまで徹底的に適用されていたことでした。

要するに、同じ部屋で同じ分野の仕事をしている課のメンバーであっても、他のメンバーが今日どんな仕事をしているのか、というのは誰もイマイチわかっていないのです。

ファミレスで例えてみます。

一つの店舗内で働くスタッフでも、ホール係とキッチン係では仕事の分野が違うので、互いに何をしているのかよくわからない。
同じキッチン係の中には3人スタッフがいて、「調理担当」「盛り付け担当」「ドリンク担当」に明確に分かれている。

盛り付け担当者である私は、調理方法もドリンクの注ぎ方もさっぱり理解していない。
他のキッチンスタッフが何をしているか、ファミレス全体で今何が起こっているのか、私には把握しきれないが、自らの職務である盛り付け業務に、私は今日もただ励み続ける…。

と、こんな感じの状況でしょうか。

ぼく

…ファミレスの例えはかえってわかりにくかったかもしれません。

隣の同僚が何をしているのかもわからない

「係」とか「班」がグループとしての最小単位だとすると、「係長」とか「班長」が担当者にとっての直属の上司になります。

係長を中心として各係員(約2~4人)一丸となって業務を遂行しよう!という組織編成ではあるのですが、実際には担当者ごとにかなり性質の異なる業務がそれぞれ明確に割り振られていたりします。

雰囲気としては次のような感じですね。

山田係長
1. 係の総括に関すること
2. 〇〇総合施策に関すること
3. ・・・
・・・

田中主任
1. ✕✕制度の運用・推進に関すること
2. △△施設等の管理に関すること
3. ・・・
・・・

鈴木主事
1. □□計画の策定および協議会に関すること
2. ※※団体等との連絡調整に関すること
3. ・・・
・・・

職務分掌に則って、割り当てられた業務は基本的にその担当者が自ら責任持ってやるべきこと。

そうすると事実上、隣の席に座っている係員が今どんな業務を進めているのかすら、あまり知ることがありません。

各担当者目線で見ると、
担当者(自分) ⇒ 係長 ⇒ 課長 ⇒ 部長…
といった一本の縦のラインだけで仕事が進行していく感じ。

だから自分の担当業務外のことを聞かれても、何のこっちゃさっぱりわからず、
「あーそれは(多分)〇〇さんの担当ですね。直接聞いてみてください」
となるわけです。

上司も担当者の仕事を把握していない

そして「他の職員が何やってるかよくわからない」というのは、上司にとっても同じことです。

職員はみんな役職に関わらず数年ごとに部署を異動していくので、その課で受け持つすべての業務を詳細まで知っている人間というのは誰もいません。

上司も含め、各々が自分の注力すべき業務について責任をもって臨み、その他の業務については担当の同僚や部下にお任せ。
必要があったときに必要な範囲で情報共有・協力するのです。


ちなみに以下は、ぼくが県庁で働き始めた初日の話です。

1日目ということで、自分のデスクにある書類の山をどこからどう処理していいかすらまったく分からなかったので、なんとなく当たりをつけて上司に確認してみることにしました。

あいまいな点は些細なことでも上司に確認しながら進めること!報連相が大事です!
といった「社会人の心構え」的なハウツーを見た覚えがあったからです。

ぼく

すみません、この書類の件への対応なんですが、こんな感じで処理する方向性で問題ないですか?

すると、上司からはこんなコメントが返ってきました。

係長

それはあなたの担当業務だから、私に聞かれてもわからないよ。
自分で過去の資料を調べたり、前任者に連絡を取ったりして進め方を探ってね。

それでも判断に迷う場合は、判断材料と選択肢の根拠を自分なりにまとめたうえで相談すること。
実務はあなたの仕事、判断と承認は私の仕事だよ。

ぼく

あ、なるほど。
そういう感じなんですね、出直してきます!


正直、初出勤時のぼくは「過去の資料を調べる」という発想すら持っていませんでした。
(大抵の業務に関しては昨年の起案書類が残っているので、そこから情報を拾えるのです。)

振り返って考えると、やはりこのときの上司の返答は大変真っ当な内容だなと改めて思います。
ボトムアップ型組織の意思決定のプロセスというのは、まさにこういうことですね。

当時は少し恥ずかしい思いをしましたが、それでも業務分担・担当者の責務に関する考え方をバチッとここで学べたのは良かったな、と考えています。

縦割り分担にも理由がある

さて、ここまでぼくが公務員1年目で経験した仕事のあり方について書いてみましたが、決して縦割りの業務分担自体を批判したいわけではないという点は強調しておきたいかなと思います。

単にぼくが事前に想像していたイメージと実際が違ったので、「あ、そういう感じだったのね」と驚いたという話ですね。

縦割りだろうが横割りだろうが、それが組織と業務をしっかり回していくためのやり方なのであれば、それで良いと思うのです。

それから当然ですが、すべての自治体・部署において個人主義的な分担がされているわけではありません。

実際ぼくがその後の公務員生活で見てきた中だけでも、その組織で扱う業務内容の性質によっては、担当者個人ではなく複数人で同じ仕事を共有しているようなケースもたくさんあります。

そのあたり、少し補足させてください。

担当者に委ねざるを得ない事情もある

まず、縦割りの是非についての補足です。

たしかに縦割りを個人レベルまで徹底すると、その領域がどんどん属人化していくリスクが生じてきます。

  • 担当者が変わったときに仕事の質や方法が変わる
  • 担当者が不在のタイミングで外部への対応ができない
  • 担当者に何かあって欠員となった場合に、他の職員による補填が難しい

こういった問題は、仕事の属人化からくるデメリットですね。

一方でぼくはやっぱり、個人主義的な縦割りの分担制も仕方ないよね、とも思うのです。
それはシンプルに、行政が抱える業務の幅があまりにも広すぎるからという点に尽きます。

行政の仕事というのは、仮に表面的には小さな業務であっても、そのひとつひとつに様々な考慮すべき背景・制約が絡んでいます。

業務ごとに存在する背景・制約の例

  • 根拠となる法律、施行令、施行規則、告示、通達
  • 自治体で定める条例、規則、要項
  • 自治体としてのこれまでのスタンス、過去の経緯
  • 外部機関、外部団体との信頼関係

何かひとつ意思決定をするたびにこうした膨大な予備知識をふまえる必要があるとなれば、一人の人間があれもこれもと幅広く業務を受け持つのは無理があります。
頭の容量と時間が圧倒的に足りなくなってしまうからです。

業務の幅が広範囲になると、「チームみんなで協力して同じ業務をこなそうね」のやり方では現実的に仕事の全領域をカバーしきれないんですね。

業務ごとの担当者を一人に絞っておくことは、行政のように幅広い分野を並行して進める組織においては効率的な戦略だということです。

まあホントは行政の業務の幅を減らすか人員を増やすかして、そのぶん複数人で同じ業務に当たれたらベストなんですが…。
法令の縛り・予算の縛りもあってなかなかそうもいかないので、結局はとりあえず実務が回せるやり方を採用するしかないということです。

業務の性質によって分担は変わる

次に、「公務員=縦割り個人主義」とも限らないぞ、という補足です。

同じ行政といえども、部署や自治体の規模によって扱う業務の性質がかなり違うので、当然分担の仕方も変わってきます。

たとえば極端な例では、自治体をあげた特大規模のイベント(マラソン大会とか)の企画チームのような配属になると、縦割り的な業務分担とはかなり違った雰囲気なのではないでしょうか。

もちろん担当ごとに責任を担う領域はあるにしても、部署全体が同じひとつのイベントに向かってプロジェクトを進めるわけなので、互いに同じ前提知識や背景の多くを共有しながら協力することになる点で、縦割り感は薄いはずです。

要するに、組織間で業務量の総量が同じものと仮定しても、

  • 業務の幅は広いけど量はほどほど
  • 業務の幅は狭いけど量が膨大

といったように大きく2パターンがあるんですね。

傾向として前者は縦割り個人主義になりがちだし、後者は横割り全体主義になりがちだということです。

まとめ

というわけで今回は、

  • 公務員1年目のときに縦割りの業務分担・個人主義的な考え方に驚いたこと
  • でもそれには妥当な理由があるし、公務員=縦割り分担とも限らないということ

についてお話してみました。

ぼくがかつて、いざ公務員として働き始めるぞ!というタイミングで困っていたのが、公務員がどういう雰囲気で仕事をしているのか具体的なイメージがまったく湧かなかったことなんですよね。

学生時代にバイトをいくつか経験するだけでは、いわゆるオフィスワークがどんなものかなんて想像できないし、まして公務員としてのお作法・常識なんてわからないので、すごく不安だったのを覚えています。

似た立場の方にとって少しでも助けになるよう、今後も思い立ったときにこういった方向性の記事を残していけたらと思っています。

ぼく

テーマのリクエストなどもあれば歓迎ですので、お気軽に連絡くださいね。