HazelNutsChocolateの『人生讃歌』は本当に人生の讃歌だと思った今日この頃

むかーし聴いていた音楽が、ふと突然頭の中によみがえってくることってありますよね。
ぼくもつい先日、その現象に見舞われました。

そのとき脳裏に再生されたのは、「Hazel Nuts Chocolate -ヘーゼルナッツチョコレート-(通称:へなちょこ)」という音楽グループの、人生讃歌という曲。
へなちょこの記念すべきファーストアルバム『Bewitched!』の中に収録されている一曲です。

およそ10年ほど前、当時大学生だったぼくは、このアルバムを鬼のようにリピートしていたことがあるんですよね。
絵本の世界をそのまま歌にしたような、へなちょこ特有の世界観にドハマりしたのです。

今思い出してひさしぶりに聴き返してみても、いやあやっぱり、本当に可愛らしくてクセになる素敵な音楽です。

そしてこれは今になって初めて感じたことなのですが、よくよく歌詞を聞いてみると、『人生讃歌』というこの曲名のなんとピッタリなことか。

今回はこの曲の歌詞を紹介しながら、感じたことを書いていきたいと思います。

悲しい気持ちも人生の一部

『人生讃歌』は、終始ポップなメロディとゆるふわな歌声で進行する癒し系の曲となっています。

しかしその曲調に反して、「人生の中で辛くて悲しくてどうしようもない瞬間」というものを非常に冷静に捉えた楽曲でもあると思うのです。

曲の中に、こんな一節があります。

泣きたくなって笑いたくなって
くるくる私は忙しい
産まれた時から死んじゃう時まで
悲しんで楽しんで生きるのだ

Hazel Nuts Chocolate 『人生讃歌』

人生には色んな出来事が起こるので、悲しい気持ちでいてもいつかはきっと楽しくなるし、逆に楽しい気持ちになってもやっぱりいつかはまた悲しくなってしまうものです。

この曲では、そんな気分の浮き沈みそのものを決して悪いものとは捉えず、避けようともしていないんですね。

ぼくたちは苦しくなるとついつい、「この苦しみから逃れたい」とか「楽になるにはどうしたらいいか」などと考えがちです。
メンタルヘルス系の本などを読んでも、心の軽くするためのメソッドがあれこれと書いてあります。

ところが時として、苦しみを振り払おうと奮闘すること自体が苦しみを生んでいることもよくあるわけで。

これはまるで天気がくるくると変わりゆく中で、雨の日にまったく濡れることなく外出しようと奮闘しているようなものなのかもしれません。

悲しい気持ちも人生の一部として自然体で引き受けることができれば、無理して気分を上げる必要はありません。
そんなことを思うとなんだか肩の荷が下りて、視界がとてもクリアになるような気がしてきます。

人には人の気分の動き

また、こういった歌詞も続きます。

悲しい気持ちになった時は
頼りない私の胸を貸してやるのだ
そして私が悲しくなった時はやっぱり
頼りない君の胸を借りにゆくのだ

Hazel Nuts Chocolate 『人生讃歌』

悲しい気持ちと楽しい気持ちをくるくると繰り返していくのが人生なわけですが、それは別に私だけがそうなのではなく、周りにいるほかの人も、みんな同じなんだということです。

これはまあ当たり前ではあるんですが、その感覚って意識していないと結構忘れがちだと思うんですよね。

特に自分の調子が落ち込んでしまっているときというのは、まるで世界の流れから自分だけが取り残されているような感触すら覚えてしまいます。

しかし冷静に俯瞰してみると、実際にはすべての人々の中でそれぞれの気分の上がり下がりが波のように絶えず変化していて、そこにたまたまメチャクチャ落ち込んでる人とか、逆に嬉しくてたまらない人とか、どちらでもない人とかがいたりする。

自分もそういう大きな現象のほんの一部なんだと、『人生讃歌』と聞いているとそんな感覚になってくるのです。

そして歌われているように、その時たまたま悲しい気持ちの人が、その時たまたまあんまり悲しくない人を頼ることでバランスを保って…という人々の営みが、とても素敵なことのように感じられます。

人生の讃歌とは

さて、人生讃歌という言葉の意味を辞書などで引くと、
「人生のすばらしさを表現している作品」
といった語釈が出てきます。

でも個人的には、ただ単に人生の楽しさや意義、ポジティブな面だけを取りあげて褒めたたえているのでは、いわゆる「人生讃歌」というには何か欠落しているような気がしてしまいます。

そうではなくて、人生の辛さや悲哀、どうしようもならない苦しさとしっかり向き合ったうえで、それらを全部まるごとひっくるめて、それでも人生にイエスを提示するものこそ、真の「人生讃歌」だと思うんですよね。

こういった意味で、Hazel Nuts Chocolateの『人生讃歌』は、たとえ曲名を知らないままに聴いたとしても「これは人生讃歌だ」と感じさせられるような、まさに人生讃歌だったのでした。

いやあ10年前に鬼リピしていた大学生当時は、ここまでごちゃごちゃと考えていなかったんですけどね。

自分自身社会へ出て、適応障害とか休職とかいろいろと経験する中で、何かしら感受性に変化があったということなのかもしれません。

今回ご紹介した『人生讃歌』以外にも素敵な曲がたくさんあるので、Hazel Nuts Chocolate、気になる方はぜひ検索してみてください。